23年前、トリプル(3層)ガラスの木製サッシを入れるなど、当時としては最先端の高断熱・高気密技術で建てたHさんのお宅。亡くなったご主人との思い出が残る自慢の家は、経年劣化からか、スノーダクトの屋根から水漏れを起こしていることが悩みでした。そこで屋根の専門業者に相談したところ、想像以上に費用がかかることが判明。それならいっそのこと、娘さん夫妻と「一緒に住もうか」という話が浮上し、2部屋しかなかった2階を増築して同居することに決めました。
リフォームの依頼先には、Hさんのお友達の家を手がけ、評判を聞いていた福住を選択。知人の紹介という安心感は、相談をするうちに信頼感に変わっていきました。
娘のAさんご夫妻は最初、キッチンもトイレも共有する、まったくの同居スタイルでいいと考えていました。けれども母のHさんから「お風呂と玄関以外は別にして、お互いのプライバシーを保とう」と提案があり、そうすることに。考えてみれば、共働きのご夫妻とお母さまでは生活のリズムが違いすぎるため、そのほうがいいね、という結論になりました。
2階は既存の倍以上の面積に増築するため、大幅に増える建物荷重を1階部分がしっかり受け止められるよう構造を補強し、断熱・気密は高性能な1階に付随するように高いレベルで整えました。またプランニングでは「仕切りのない開放的な空間で、窓は大きくしたい」という、ご主人の希望を主体に室内を構成。階段を中心にぐるりと広がるLDKは、ご主人が塗装の色合いを含めて吟味を重ねた、無垢カバ材のフローリングが足触りのいい空間です。
壁のない一室をキッチン・ダイニング・リビング・書斎と、コーナーで使い分けているAさんご夫妻の生活ゾーン。一角に設けた洗面には、福住が北海道唯一の日本正規特約店を務める、米国コーラー社の水回り製品を採用しています。タイル使いもおしゃれな洗面に、「女性たちはみんな、ステキ!っていってくれます」と奥さま。ご自身も、真鍮の水栓金具や鏡など、トータルでコーディネートされていく洗面台に「夢が膨らみました」と話します。
勇壮な山並みが遠望できるシチュエーションを活かして設けたデッキは、テーブルと椅子を置いても余裕の広さ。「暖かくなったら、いろいろしてみたいことがあるんです」と、春を心待ちにしているご夫妻です
「家の雰囲気が大きく変わらないようにしてほしい」というHさんの希望のもと、外装は既存1階のモルタル壁の色と質感を活かしてデザイン。ベンチのあるデッキのようなしつらえで、家族でジンギスカンを楽しんだ記憶も鮮明な既存の玄関ポーチなど、新旧の外装が、まるで以前からそうだったように違和感なくなじんでいます。
「前は夜に2・3回は目が覚めていたんですけれど、一緒に暮らしてからはせいぜい1回。熟睡したまま朝を迎えることも増えました。気づかなかったけれど、それだけ安心感が生まれたんでしょうね」そう笑って話すHさんの言葉が何よりも、今回の同居とリフォームの成功を物語っていました。